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2023.09.04
トラスコ中山に学ぶ-常識を疑う経営-
代表の中野です。
先日、東京にて某経営コンサルタント主催によるセミナーに参加してきました。
複数の登壇者の中で、とりわけ印象に残ったのがトラスコ中山株式会社の社長、中山哲也氏です。
中山氏の講演テーマは「教科書にない経営」、
サブタイトルは、~教科書通りでうまくいくならば世の中は成功者で溢れている~
です。
お父様から社長を引き継がれて29年、中山社長は従来の常識からかけ離れたさまざまな取り組みを実行されてきました。
以下、講演でお話しされた至極の金言ともいうべき「中山語録」の一部を抜粋します。

誰もが気づき、誰もが進む方向に成功の文字はない
→ 人の10倍考えること!
社長の労働時間と業績は比例する
→ 働き者の社長の会社は伸びる
石橋をたたく経営は、一歩間違えれば臆病経営
→ 何もチャレンジせず、衰退する会社をいくつも見てきた
社長は「独創力」を持つべき
→ そのためには人の10倍考える
数値目標と能力目標
→ 能力目標の達成にはDXが不可欠
能力目標(やりたいこと、なりたい姿)を明確にする
在庫出庫率92%(即納率)
→ トラスコ中山の最大の経営指標であり能力目標
会社をよくするには悪いところを無くし続けること
→ 人間の身体と同じ
常識を疑う
→「それって本当か?」
支払リース料ゼロ、資産はすべて自己所有
やめる戦略
(手形、物品受領書、取引先懇親会、ISO取得、業界健康保険組合)
社員は正規雇用が原則、派遣はいない
物流を制する者が商流を制する
B/Sで社長の性格が分かる
取捨銭択から取捨善択へ
→ 目先の利益ではなく善悪で判断する
人は育てられない、自覚に勝る教育無し
理想の会社
→ 「その会社から買わざるを得ない」会社になる
人生の失敗は勘違いから
(自覚→実績→自信→自慢→傲慢→退場)
組織はいびつな能力を持った人材の組み合わせ
→ レーダーチャートの全ての項目が100%の人材はいない
経営の流行に流されない(SDGs、パーパス、フロー経営など)
→ 本質を見極めること
「失われた30年」と言われる日本経済。
その間のGDPの成長率は1.2倍ですが、中山社長は同社の売り上げを2.5倍にまで拡大させました。
評論家ではなく、実践者としての言葉の一つ一つに深みが感じられます。
同社は2020年IT賞「IT最優秀賞」や3年連続で「DX銘柄」に選定されています。
いわばDX先進企業の一社といえますが、中山社長は社内で「DX」という言葉は使ったことがないそうです。
能力目標(たとえば在庫を100万点管理したいなど)を実現するための手段として、結果的にDXを活用することになったとのこと。
「DXは手段であって目的ではない」という当たり前のことに改めて気づかせていただきました。
また、資産はすべて自己所有、即納率を高めるために在庫はできるだけ増やす、など従来の常識、慣例とは相反する戦略をとられています。
常識は過去の偏見ともいいます。
先行きの見通しが困難なVUCAのいま、教科書に掲載されている一般常識ではなく、「本質の見極め力」が問われる時代になってきたことを痛感させられた、刺激の多い講演でした。