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2023.12.04
「値決めは経営」について-お客様も喜び、自分も儲かるポイントは一点-
代表の中野です。
衝撃的な出来事でした。
先日、数年前にできた近所のお気に入りのラーメン屋に行った時のこと。
いつも注文するラーメンの値段が、なんと850円から1000円になっていたのです。
カウンターにテーブル二席のこじんまりとした店内です。
「えっ!、千円っ!!」
つい大きな声が出てしまい、カウンターにいる店主がやや恐縮した面持ちで私の狼狽ぶりをうかがっています。
実はこの驚きには伏線があります。
そもそもこのラーメンは2年前までは700円で、昨年850円に上がったばかりだったのです。
世界的な混乱もあって、世の中あらゆる原材料費、光熱費が高騰しています。
それにしても2年前から143%アップはいささかインパクトが大きいです。
消費税が8%から10%に上がったどころの騒ぎではありません。
京セラ創業者である、稲盛和夫氏の教えに「経営の原点12ヶ条」があります。
この6番目に「値決めは経営」というものがあります。
副題は、
-値決めはトップの仕事。お客様も喜び、自分も儲かるポイントは一点である-
です。
ここでいう「ポイント」とは、顧客の許容ラインとも言い換えられます。
「ここまでは我慢するけど、それ以上になったら買わないよ」というラインです。
残念ながら、このラインを顧客や誰かが教えてくれるわけではありません。
情報をできるだけ多く集め、最終的に値段をトップが決めなければなりません。
デービッド・アトキンソン氏は著書「国運の分岐点」で、日本経済の再興には、生産性が低すぎる中小企業の淘汰と最低賃金引き上げしかない、と結論付けています。
奇しくも、世界的な紛争、少子高齢化などの外部環境要因によって、日本企業は値上げと賃上げを余儀なくされています。
しかし逆に言えば、日本復興の最後のチャンスといえなくもありません。
件のラーメン店ですが、従来品を値上げしただけではなく新たなメニューも追加されていました。
チャーシューなどのトッピングが一切ない、その名も「かけラーメン」。
価格は従来の標準ラーメンと同じ850円。
店主の値上げに対する苦渋の思いが、この新メニューに表れています。
ちなみに私が同店の標準ラーメンに出せる上限は1000円です。
まさに、「お客様が喜び、自分も儲かるポイント」です。
値上げにショックを受けつつも、2年連続で値上げを敢行した店主の決断と、許容ラインぎりぎりの値決め力に脱帽です。