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2022.10.11
オルタナティブやサブカルがメインストリームになった激動の1994年はどんな年?
こんにちは、経営管理部のロスジェネ世代の野口です。
最近、若い人の間で流行っているファッションが90年代ですね。
見ていてこそばゆい世代の私としては、90年代によくタイムスリップして当時を思い起こすことがあるのです。
その一つが、90年代の音楽、です。
よく、「10代の思春期頃に聴いた音楽が一生もの」と言われます。
思い起こすと私の中で90年代は激動でした。
今日はその中でも、1994年のミュージックシーンに焦点を当てて書いてみようと思います。
幼少の頃は、家にマイケル・ジャクソンやライオネル・リッチーやレイ・チャールズやジャズなどのレコードやカセットテープもあったので洋楽には触れていたものの、中学生になった私は刺激を求めて自分で洋楽を探していたところでした。
小学生の頃も謎にモトリークルーやスレイヤーなどのロックは聴いていましたが、それはすぐに「黒歴史」となります。

音楽を含む様々な文化は、サブカル、アングラ、カウンターなど、メインストリームと対比して語られることが多いです。
90年代初頭、アメリカのロックミュージック界隈はオルタナティブの隆盛期でした。
サウンドや歌詞は、退廃的でカウンター的だったり、映画に例えるとB級映画のような。
1994年はNIRVANAのカート・コバーンが自死してしまった年でもありますが、
後に歴史的な一枚となるミュージックアルバムが1994年には多くリリースされました。
と同時に、私自身が中2(厨二)であったことも相まって、空からキャンディーがたくさん降ってくるような、そんな感じで爆発的にオルタナティブなものが溢れており、そしてメインストリームに取って代わる一年のように感じました。
また、NIRVANAが好きだった私は、悲しみを埋めるように様々なオルタナティブ・ロックを聴き漁っていました。
ヒップホップジャンルは代表的なブラックカルチャーでしたが、
ビースティ・ボーイズはヒップホップを人種を超えたものにしたと思います。
94年にリリースされた「Ill Communication(読みにくいですがイルコミュニケーションです)」が私のベストですし、
HOLEの「Live Through This」は夫であるカート・コバーンが自死した後すぐにリリースされており、
妻でもあるボーカルのコートニー・ラヴは、イギリスのパンクバンドメンバーのシド・ヴィシャスの恋人ナンシー・スパンゲンに例えられているのをよく見かけました。
SOUNDGARDEN の「Superunknown」を今、聴きながら書いていますが、このアルバムは全曲が名曲だと思います。「何かCD貸して」と言ってきた友達に「10回聴いたらハマると思う」と、リリースされて5~6年経過してある程度ヒットしている実績のあるこのアルバムをダメ元な気持ちで渡したのを覚えています。今現在は28年経過しているので、更に実績の裏付けが積み上がっていますが、さすがに年月が経ちすぎていますね。
この SOUNDGARDEN といえば、グランジロックの王様のような存在ですが、その後、映画『007/カジノ・ロワイヤル』の主題歌を歌い上げたボーカルのクリス・コーネルは、2017年にライブ後にホテルで自死してしまいました。
次に、Stone Temple Pilots の「Purple」も凄く良いアルバムでした。
CDのブックレットの匂いを嗅ぎながら聴いていたのが懐かしいです。このバンドは低評価な気がしています。未だに納得の行く論評を目にしたことはないのですが、自分なりの解釈だと、当時のオルタナティブやグランジといった荒削りなままにリリースされる音楽ジャンルが台頭する中ではちょっと洗練され過ぎていたので、流行に乗っているのだ、といった低評価に繋がったのでは?と思ってしまいます。
そのくらい、時代、流行りを超えて聴ける楽曲ばかりで、その後に続く「Tiny Music... Songs from the Vatican Gift Shop」、「No. 4」、「Shangri-La Dee Da」はどれも素晴らしいですよ。
こちらのボーカルも現役の頃から薬物問題でトラブル続きでしたが、2015年に薬物とアルコールの併用によって亡くなってしまいます。
Pearl Jam の「Vitalogy」も94年リリースです。
姉とライブに行った時、ボーカルであるエディ・ヴェダーがワインボトルを足元に置いて、ラッパ飲みしながら歌っていたのが衝撃でした。
ネット上でアルコール依存を探してみましたが、見当たりませんでしたが、レディー・ガガが出たブラッドリー・クーパー監督主演の2018年公開映画「アリー/ スター誕生」のブラッドリー・クーパーが演じた役のモデルでもあるらしいので、若干のアルコール依存なのでしょうか?
ちなみにPearl Jamは現役であり、この映画のようにアルコールによってキャリアが右肩下がりということはありません^^;
ビッグになった Pearl Jam は、海賊版対策で「公式Bootleg」を全てのライブで公開しました。盗撮によって流通する海賊版を闇業者から購入せずとも、安価に公式のライブ盤を聴ける、ということです。
またライブチケットも安価に設定したりして、多くの子供達がダフ屋から高額なチケットを購入せずに健全にライブに行けるようにしていました。
サブカルやカウンターカルチャーの精神を保ちながら、音楽業界の商業主義と闘い生き続けているバンドの一つです。
次に Nine Inch Nails の「The Downward Spiral」も94年リリースです。
まるで鉄工所のような音が打ち込みのサウンドから聞こえてきます。
当時「インダストリアルミュージック」というジャンルがこのバンドによってできましたが、このバンド以外に分類されることがなかった、という逸話が残っています。唯一性が表された逸話だと思います。
Nine Inch Nails の94年といえば、Woodstock'94 ではないでしょうか。
NIN(バンド名が長いので、NINと略されます)ファンは、泥だらけの画像や映像を目にした人も多いと思いますが、NINの活動としても歴史に残る名ライブだったと思います。
私の中2(厨二)の夏休みの思い出は、BSで生中継されていた Woodstock’94 のVHSテープへの3倍速録画です。この中継の録画は限られたテープをいかに無駄なく、必要なものだけを残すか、という作業だったのを覚えています。
Woodstock’94の泥だらけといえば、アルバム「Dookie」がリリースされた Green Day も、泥まみれの藁を投げられていたのが記憶に残っています。
こちらはブーイングによるものでしたが、まさかこのライブがその後の華々しいヒットの始まりになるとは誰も思っていなかったと思います。
(私もこの Woodstock’94で初めて Green Day を知り、明るいパンクサウンドでカート・コバーンの死を乗り越えた記憶があります。)
今、思い起こすと、泥だらけで汚い、荒削りな(スタジオで編集をせずにそのまま録音されたものも多く、咳払いや話し声、ノイズもそのままアルバム収録されたオルタナティブ・ロックは多く、それが当時の潮流だったのだと思います。)、着飾らないファッション(当時はファッション誌で「グランジファッション」と紹介されていました。林業労働者のようなチェックのネルシャツ、編み上げブーツ、破れたジーンズ、よれよれのTシャツなど)もこの辺りがピークだったような感じがしています。
その後、少しずつ清潔さが出てきたロックシーン。
オルタナティブがメインにとって変わった1994年を折り返し地点として、小綺麗になっていきます。
Beck というアーティストが1994年にデビュー、リリースした「Loser」が、まさに象徴的でした。
このアーティストのその後の変遷が、当時の潮流の変化をよく表していると思います。
その後どのように変遷していくのかも語り尽くしていきたいのですが、
今回は、90年代前半の、オルタナティブロック隆盛期をもう少し振り返ってみます。
この時期のアメリカでは同時にフェミニズム運動も盛り上がってきています。
まだ中学生だった私が初めてフェミニズムという言葉を知ったのも、ミュージックシーンからでした。
マドンナが1992年にリリースした「Erotica」というアルバムで世界は仰天。
当時、ガールズバンドや女性ボーカルが多く活躍しました。
私も多くのガールズバンドのアルバムを持っていますが、そのほとんどが今は活動を終了しています。
ちょっと寂しい気もしますが、出産などで人生における価値観が変化するのはごく自然なことなので、改めて考えると、20年も30年も当時のヒット曲を巡業先で演奏しているバンド活動というものは商業主義というか、自然な人間の営みといえるかどうかは疑問ではありますね。
私が当初から好きであったバンドメンバーの、少なくない人が自死しているので、
芸術活動と商業活動の折り合いをつけるのは、至難の業だと思います。
当時のアメリカのミュージックシーンではいつもアルコール依存や薬物が問題となっており、
伝記などを読んでも多くは学校の中退、複雑な家庭環境と、過酷な環境が伺えました。
当時の雰囲気がよく伝わる映画として、
フィギュアスケート選手のトーニャ・ハーディングの半生を描いた「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」が割りと新しいので挙げてみます。
まさに、1994年に起きた事件をテーマにしてもいるからです。
もうひとつ、時代背景は1993年だそうですが、当時の雰囲気をそのまま醸し出している映画として「ザ・ファイター」も挙げておきます。
こちらはアカデミー賞助演男優賞と助演女優賞を受賞しており、大変見ごたえのある映画です。
この映画に出てくる情景は、そこらじゅうにあったのではないか、とアメリカ人著者のエッセイなどを読んでいても感じるので、おそらくリアルに描かれているアメリカの日常だったのだと思います。
今回は、1994年をピークとするオルタナティブ・ミュージックシーンを中心に書いてみました。
その後2000年代も面白く変遷していくのですが…、また機会があれば。