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2019.03.04
自動車業界の大変革、「CASE(ケース)」について
代表の中野です。
最近、メディアで自動車業界に関する「CASE(ケース)」という言葉をよく目にします。
業界になじみの薄い方ですと、
「事例」という意味や、モノを入れる箱のようなものと勘違いされるかもしれません。
自動車業界でいうCASEとは、
- Connected(コネクティッド)
- Autonomous(自動運転)
- Shared & Services(カーシェアリングとサービス)
- Electric(電気自動車)
の頭文字をとった造語です。
このCASEという言葉は、2016年のパリモーターショーにおいて、ダイムラーが発表した中長期戦略の中で用いたのが始まりです。
日本をはじめ、いうまでもなく自動車産業は欧米主要国にとっても経済を支える重要な基幹産業です。
その自動車産業は、いま大きな変革期にあります。
その象徴がCASEです。
この4つのキーワードで特に注目すべきは、、、
Connected(コネクティッド)です。
未来の自動車産業を占う上で、このコネクティッドがすべての基盤となるからです。
コネクティッドに近いもので、テレマティクスというものがあります。
交通情報提供サービス「VICS」や、「ETC」などの高度道路交通システム「ITS」などがその活用例です。
しかしコネクティッドはテレマティクスとは似て非なるものです。
コネクティッドとは、
「クルマがIoT端末としてネットワークにつながることで、有機的に広がるプラットフォーム全体を網羅する概念」※1
です。
世界には約10億台の乗用車が普及しており、2030年には13億台に達すると予想されます。
標準装備の通信機を内蔵した常時接続型と、IT企業が提供する専用の車載端末やスマホ連携型を含めれば、
2030年にはネットワークに接続される車は10億台を超えると予想されます。
流通、サービスなど裾野が広いバリューチェーンはもとより、公共交通や社会インフラまでも連結した、
巨大なネットワークが誕生します。
繰り返しですが、コネクティッドは日常便利な乗り物として活用されている
クルマが「IoT端末」になるということです。
この結果、個人がクルマを所有して運転の主導権を持って移動する使用形態から、
Mobility as a Service(MaaS)に進化していくことになります。
すでに都市圏を中心として、法人・個人向けのカーシェアサービスは急成長中です。
トヨタやGMもライバルであったカーシェア事業に参入しました。所有から共有への移行は
避けられないトレンドだからです。
弊社も昨年、本社の社用車をリースからカーシェアに移行しましたが、その便利さや、
運行状況データのサービス提供内容に驚きました。
使用者ごとの走行時間、走行距離はもとより、急加速や急停止回数、最高速度まで管理され、
リアルタイムで会社に連絡が入ります。
クルマを会社で所有していた時には、知ることができなかったデータです。
これらのデータは社員の安全運転指導に活用できます。
いずれにしても、自動車産業が誕生して以来、いま大規模な変革期を迎えているのは間違いありません。
MaaSに不可欠なプラットフォームを築き、データを支配し、魅力的なサービス提供会社を囲い込む、
新しい能力や柔軟な発想が自動車メーカーに求められてきます。
単なる製造業ではなく、モビリティサービスの基盤づくりからサービスそのものを提供する会社へと、
自動車メーカーは生まれ変わっていかなくてはなりません。
いわば、自動車産業からモビリティ産業への転換です。
ここで難しいのは、その変化が緩やかなことです。
EV車は、バッテリー、インバーター、モーターの主要3コンポーネントによる比較的単純な構造で、
メーカーとしては比較的参入しやすいといえます。
テスラを筆頭として、自動車業界の門外漢であったヤマダ電機や掃除機メーカーのダイソンも、
自動車メーカーへの参入を表明しています。
しかし、バッテリーの持続時間やEV充電スタンド設置数等の課題などにより、
完全EV化には意外と時間がかかります。
2040年時点でもエンジン搭載車は全体の84%と見込まれています。
内燃機関の寿命はまだまだ持ちそうです。
携帯がわずか数年でガラケーからスマホへ移行したように、
クルマが短期間で完全EVに変わることはないようです。
また、所有から共有といっても、地方では投資効率的にカーシェアが急速に進むとは思えません。
自動車産業は、ゆるやかに、ゆるやかに、そして着実にCASEに移行していくことになりそうです。
なおかつ、その時々のゆるやかな環境変化にフィットした対応、サービス提供が求められます。
半導体メーカーやIT企業とのアライアンスを含め、経営の舵取りがいっそう難しくなってきます。
私たち利用者側からすれば、免許証という概念がなくなり、完全自動運転で、
年を重ねても自由に安全に移動できるカーライフの実現を期待します。
もちろんそのときは公共交通機関と同じように、
運転席に座りつつも、ぼんやり車窓を眺めたり、読書やお酒を楽しめることを祈って。
※1:「CASE革命」(中西孝樹著)より引用