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2019.08.05
サブスクリプションの本質について
こんにちは、代表の中野です。
いま、ビジネスモデルとして注目されているのが「サブスクリプション」です。
音楽、映画、アパレル、玩具、ブランドバッグから車まで、ありとあらゆるサブスクリプションサービスが提供されています。
サブスクリプションは定額課金制と一般に認識されていますが、本来の意味はそうではありません。
サブスクリプション(subscription)とは「申し込む」や「購読する」という意味の“subscribe”の名詞形です。
ユーザと事業者が一定期間において契約関係にあり、その間に利用に対する料金の支払いがある状態をさします。
古くからある新聞や雑誌の定期購読は、サブスクリプションの原型です。
サブスクリプションは、リカーリングという継続型収益モデルの一つにすぎません。
旧来のリカーリングに、リース、レーザーブレイド、リピーターがあります。
リースは、ユーザーが所有権を持たず、サービス提供企業に利用対価を支払うやり方です。
社用車、コピー機、工場の設備など、企業ではおなじみの調達手法です。
レーザーブレイドは、本体を格安で提供し、消耗品を継続的に販売する手法です。
名称の由来であるカミソリ本体とカミソリの刃、携帯電話と通話料、プリンターとトナー、ゲーム機とゲームソフトなどがあります。
ちなみに個人的に、20年以上Schickの二枚刃カミソリを愛用しています。
それだけ永きにわたり、本体の何倍以上もShickの替刃売上に貢献していることになります。
リピーターは、ブランドショップ、居酒屋、レストラン、美容院など、各種サービスを繰り返し利用する顧客のことです。
契約的な縛りがない分、サービス提供企業は、継続的に品質やサービス向上に努めていかなければなりません。
このようなリカーリングモデルのデジタル発展形として、サブスクリプションサービスは生まれました。
サブスクリプションに似たビジネスモデルにフリーミアムがあります。
これはフリー(無料)とプレミアム(有料)を掛け合わせた造語です。
本体は無料だけどオプションは有料というサービスです。
ゲームソフトは無料だけど、アイテムは有料、といったものです。
iCloudやDropboxもある一程度までは無料で、それ以上は有料というフリーミアムの一つです。
フリーミアムとレーザーブレイドは似ていますが、違いは本体が有料なのか、無料なのかというだけです。
ビジネスモデルを整理すると、サブスクリプションそのものは特段目新しいものではなく、
収益化モデル(マネタイズ)の一つということが理解できます。
サブスクリプションに限らず、リカーリング全般にいえること。
それはマネタイズの仕組みだけではなく、アセタイズ(アセット:資産化、資産の増強)が重要ということです。
不動産賃貸ビジネスでいえば、資産は経年劣化しますので、大規模修繕、定期メンテナンス、
宅配ロッカーの設置など、資産の増強に努めないと、家賃の低下や入居者の退去(契約解除)につながります。
コンサルタントでいえば、一度聞いたことは鮮度を失います。
顧客を失いたくなければ、常に学び続けて知識や情報をアップデートしなければ、顧問契約は解除されてしまいます。
サブスクリプションで成功している企業の一つに、セールスフォース・ドットコムがあります。
SFA/CRMの分野ではグローバルにおけるリーディングカンパニーであり、毎年20%以上という驚異的な成長を続けています。
セールスフォース の成長要因ですが、サブスクリプションの仕組みもさることながら、
アセタイズ(資産の増強)の取り組みを見逃してはなりません。
まず年三回のシステムのバージョンアップがあります。ユーザの声に耳を傾け、常に機能の進化が図られています。
メールやウェブセミナー、サポートや定着化支援(有償)、活用自慢大会、ユーザ同士が相談しあうコミュニティなど、
導入後のユーザとのつながりや成功を意識した取り組みにも余念がありません。
また、トレイルブレイザー(先駆者)という企業内でのセールスフォースの啓蒙者の育成にも取り組んでいます。
知識の習得度合いに応じてバッジをもらえるなど、成長を楽しめるユニークな仕組みもあります。
これらはすべて、ユーザとの結びつきを強める、いわゆるアセタイズ(資産の増強)です。
サブスクリプションというと、何か最初に仕組みさえ作れば、その後はチャリンチャリンと自動的に収益が上がるような、
濡れ手に粟のようなイメージを思い浮かべます。
しかし、マネタイズは確実に消耗していくこと、消耗するマネタイズに追いつくようなアセタイズなくして
サブスクリプションの成功はあり得ません。
売り切り型やリカーリングというビジネスモデルにとらわれる前に、ユーザーに寄り添う、
ユーザーの成功を願うという気持ちを持ちつつ、顧客との強いつながりを意識していく企業のみ、
真の信頼関係を構築できるということを忘れないようにしたいものです。
※参考文献:「つながり」の創り方(川上昌直著)