2022.10.03
代表の中野です。
晴れがましいイベントのはずなのに、心から喜べない自分がいます。
9月23日に開通した西九州新幹線です。
長崎駅〜武雄温泉駅までの部分開通での船出となりますが、最大の問題は武雄温泉駅から博多駅間の全線開通の目途が全くたっていないことです。
なぜ、このような事態に陥ってしまったのでしょうか。
鉄道交通の専門家でもない素人の私が、プリミティブにその原因を分析してみました。

1点目は、事業の目的が明確であったかどうかです。
日本軍の戦略・組織における失敗を分析をした書籍に「失敗の本質」があります。
本書には、
「いかなる軍事上の作戦において、そこには明確な戦略ないし作戦目的が存在しなければならない」
「目的のあいまいな作戦は失敗する」
とあります。
ガダルカナル作戦、インパール作戦などの失敗は、戦略目的が曖昧だったからとされています。
また、先月逝去された京セラ創業者、稲盛和夫氏が提唱されている「経営の原点12ヶ条」の第1条には、
「事業の目的・意義を明確にする」とあります。
規模の大小を問わず、目的の明確化は事業の成否を左右する根幹であることが分かります。
西九州新幹線は事業構想から50年が経過しています。
当然ながら外部環境は年を経るごとに変わりますし、プロジェクト責任者は何名も変更になったことでしょう。
ただし、事業の目的だけは明確にし、組織や関係者で引継ぎ、常に共有されなければなりません。
事業の目的は、何か問題が発生したときに戻るべき原点といえるからです。
2点目は、悲観的な計画がなされていたかどうかです。
これも稲盛和夫氏の引用になりますが、「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」という言葉があります。
悲観的な計画というのは、うまくいかない可能性をすべて洗いだし、その一つ一つに緻密に対策をたてるということです。
稲盛氏はNTTに対抗する長距離通信会社として第二電電(現KDDI)を創業されました。競合2社(国鉄系、道路公団系)との決定的な違いは、第二電電は通信インフラを所有していないことでした。
第二電電は当初、国の所有物である鉄道路線、若しくは高速道路に沿ってケーブルを敷設しようと考えていたそうですが、予想に反して一切協力を得られないことに。
そこで代替案として、大阪から京都、名古屋、東京間の山の頂きにパラボラアンテナを据えて、マイクロウェーブという無線を使って、通信ネットワークを一から整備する方法をとることにしました。
当初の見込みより工数と予算が余計にかかりますが、悲観的な計画として「パラボラアンテナ案」は稲盛氏の頭の片隅にあったはずです。
西九州新幹線の迷走は、既存鉄道を活用するFGT(フリーゲージトレイン)が頓挫したことです。
そもそも国内でFGT導入実績はなかったのですから、実用化の目途が立たないというパターンも想定し、それに変わる代替案も構想しておくべきだったでしょう。
もしFGTが実現できない場合、残された選択肢は以下の二つです。
事業を推し進めるのか、果たして中止するのか。
相反する決断ですが、いずれを選択するにせよ、リーダーは相当な覚悟を決めて臨まなければなりません。
そしてその覚悟を後押しするのが、大義名分ある事業目的になります。
西九州新幹線の総事業費は6000億円に上るそうです。
先が見えない西九州新幹線の「失敗の本質」を自分なりに考え、せめて今後の教訓として活かしていきたいです。

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