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2026.07.13

おもちゃたちは、いつも必要とされなくなる不安と向き合っていた?|『トイ・ストーリー』シリーズを振り返って

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こんにちは。経営管理部の野口です。

先日、楽しみにしていた『トイ・ストーリー5』を観に行ってきました。

『トイ・ストーリー』といえば、おもちゃの視点で描かれたウッディやバズたちが繰り広げる楽しい冒険物語。初めて映画館で観たのは2作目で、当時はにぎやかで、少しハラハラして、最後には心が温かくなる作品という印象でした。まだまだ珍しかったフルCGアニメで、リアルな質感も注目されていました。

Amazonプライムでシリーズがセット売りされていて、大人になった今でもたまに観たりしますが、シリーズ全体を振り返ってみると、少し違った見え方をしてきます。

このシリーズがずっと描いてきたのは、もしかすると「自分はもう必要とされないのではないか」という不安だったのではないか、と思ったのです。

第1作『トイ・ストーリー』では、ウッディの前に最新のおもちゃであるバズ・ライトイヤーが現れます。

それまでウッディは、アンディの一番のお気に入りでした。ところが、光って、しゃべって、宇宙から来たような新しいおもちゃの登場によって、その居場所が揺らぎます。

ウッディがバズに嫉妬しているだけのように見えますが、色んなものに置き換えてみてみると、これは実は切実で、多くの分野にも共通することのようにも見えます。

新しいものが現れた時、自分の価値が一気に古くなってしまう。
自分が積み重ねてきた役割が、別の誰かや新しい何かに置き換えられてしまう…!?

これは、おもちゃの世界の話でありながら、私たちの仕事や生活にも重なります。

第2作『トイ・ストーリー2』では、ウッディが自分のルーツを知ります。彼はただのおもちゃではなく、かつて人気テレビ番組に登場していたレアな人形でした。

そこでウッディは、博物館に展示され、永遠に保存される道を提示されます。そこにいれば、壊れることも、捨てられることもありません。ある意味では、価値あるものとして守られ続けます。

しかし、それはもう誰かに遊ばれることのない時間でもあります。

一方で、アンディのもとへ戻れば、また遊んでもらえるかもしれません。でも、アンディはいつか大人になります。いつか自分は必要とされなくなる。その未来は避けられません。

それでもウッディは、限りある時間の中で誰かに必要とされることを選びます。

ここには、「永遠に保存される価値」と「いつか終わるけれど、誰かと過ごす時間の価値」という対比があります。物として残ることと、誰かの心に残ること。そのどちらに本当の意味があるのか、という問いでもあります。

第3作『トイ・ストーリー3』では、その「いつか」がついにやってきます。

アンディは成長し、大学へ進学する年齢になります。おもちゃたちは、もう以前のように遊ばれる存在ではありません。

アンディが大人になることは、本来なら喜ばしいことです。けれど、その成長によって、おもちゃたちは役割を終えていきます。

ここが『トイ・ストーリー3』の切ないところです。わかってはいたけれど、その時がついに来た、ということです。

悪者に捨てられたわけではありません。アンディが冷たい人間になったわけでもありません。ただ、時間が流れただけ。子どもが成長し、かつて大切だったものから自然に離れていく。その当たり前の変化が、おもちゃたちにとっては大きな別れになります。

ラストでアンディがウッディたちをボニーに託す場面は、感動的ですね。

アンディにとってウッディたちは、確かに大切な存在だった。その時間があったからこそ、次の子どもへと手渡されていく。そこには、終わりでありながら、大切な思い出の継承があります。

第4作『トイ・ストーリー4』では、さらにその先が描かれます。

ボニーのもとに渡ったウッディは、以前のような中心的存在ではなくなっていきます。アンディにとっては一番大切なおもちゃだったウッディも、ボニーにとっては必ずしもそうではありません。
(作品ごとに、中心的なキャラクターが変わっていくのもシリーズの面白いところです。)

誰かにとっての特別な存在だったとしても、別の誰かにとって同じように特別でいられるとは限らない。

ウッディは、自分の役割を見失いながらも、フォーキー(ボニーが初めて幼稚園で自作した廃棄物でできたおもちゃ)を守ることで何とか存在意義を保とうとします。しかし最終的には、「誰か一人の子どものおもちゃであり続ける」というこれまでの生き方から離れ、自分自身の新しい役割を選びます。

『トイ・ストーリー3』が「子どもの成長によって役割を終える話」だとすれば、『トイ・ストーリー4』は「役割を終えた後、それでも人生は続いていく話」とも言えそうです。

そして最新作『トイ・ストーリー5』では、その問いがさらに現代的になります。

今度は、ウッディ個人やおもちゃの持ち主だけの問題ではありません。タブレットなどのデジタル機器(作中では”デバイス”と呼ばれます)の登場によって、子どもたちの遊びそのものが変わっていきます。

つまり、「このおもちゃはもう必要ないのではないか」という不安が、「そもそもおもちゃという存在自体が、もう必要とされないのではないか」という不安に広がっているのです。

これは、とても現代的なテーマです。

新しい技術が生まれるたびに、古いものは役割を失っていきます。便利なもの、効率的なもの、刺激的なものが次々と現れ、それまで当たり前に存在していたものが、気づけば過去のものになっている。

それはおもちゃだけではありません。

仕事でも、道具でも、サービスでも、知識でも、技術でも同じです。
これらは「自分の価値はまだあるのか」「いつか置き換えられてしまうのではないか」という不安の中に置かれています。

新しいものが現れ、古いものが不要になる。
価値を証明し続けなければ、居場所を失ってしまう。
愛されていたとしても、それが永遠に続く保証はない。

ウッディたちおもちゃの不安は、現代を生きる私たちの不安とよく似ているといえば似ています(そんな風にトイ・ストーリーを観たことはありませんでしたが)。

けれど、このシリーズが優れているのは、ただ「不要になることは怖い」と描くだけではないところです。

『トイ・ストーリー』はいつも、必要とされる形が変わっても、そこで生まれた時間や感情までは消えない、ということを描いてきました。

ウッディがアンディに愛された時間。
ジェシーがかつての持ち主と過ごした記憶。
アンディが最後にボニーへおもちゃを託したこと。
そして、役割を失った後にも、新しい生き方を見つけていくこと。

最新作である5作目では、ボニーにぴったりの友達を作り、楽しい時間を過ごし、成長することがおもちゃ達の目標であり幸福であるように描かれています。

おもちゃたちは、いつか遊ばれなくなります。
壊れるかもしれないし、忘れられるかもしれない。
時代が変われば、子どもの遊び方そのものも変わっていきます。

それでも、誰かの想像力を広げたこと。
誰かの寂しさに寄り添ったこと。
誰かの子ども時代の一部になったこと。

その価値は、簡単には消えません。

『トイ・ストーリー』は、子ども向けの楽しい冒険映画でありながら、色んな視点でも楽しめるシリーズです。
今年はトイ・ストーリー30周年です(特設サイト: https://www.disney.co.jp/movie/toy5/jp-toystory30th )。上映期間中に、もう一度観に行きたいですね。

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