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2024.11.05
冤罪事件について考える -決めつけ刑事にならないために-
代表の中野です。
刑事:「お前がやったんだろ。」
容疑者:「はぁ? 証拠は?」
刑事:「知らない人がつぶやいてんだよ!!」
容疑者:「はぁ!? SNSの投稿!?」
ACジャパン「決めつけ刑事」の広告です。
第三者としてなら笑える場面かもしれません。しかし、当事者だったらぞっとします。
10月8日(火)、袴田事件について、検察が控訴を断念したことで、袴田巌さんの無罪がようやく確定しました。
誤認逮捕から2014年に仮釈放されるまでの47年もの長い年月、袴田さんは無実の罪で服役を余儀なくされていました。失われた時間の重みは計り知れません。
今夏、和歌山カレー事件をテーマにしたドキュメンタリー映画『マミー』を鑑賞しました。この映画は、事件発生から25年が経過した今、その実情を追った作品です。
事件当時、現場付近に住んでいた林真須美死刑囚が殺人などの罪で起訴され、平成21年に死刑判決が確定しました。この事件について、強く印象に残っている点がいくつかあります。
林死刑囚が夫と共謀して、過去にヒ素を使った保険金詐欺を行っていたこと(自宅にヒ素を保有)
報道陣が押し寄せる自宅前で、林死刑囚がホースで水をかけるシーンが繰り返しテレビに映し出されたこと
私自身、これまでこの事件について「犯人は林死刑囚なのだろう」という漠然とした思い込みがありました。しかし、この映画を観て、あまりに安易な考え方だったと深く反省させられました。
映画の中で、目撃証言や科学的な証拠の信ぴょう性に疑問が示され、林真須美死刑囚が有罪確定後も繰り返し再審請求を行っていることなど、司法制度の課題が浮き彫りにされています。
冤罪が発生する背景には、警察や検察が早期解決を求めるあまり、容疑者の自白や偏った証拠収集に頼る傾向があると言われています。袴田事件のように、心理的な圧力や長時間の取り調べによって、無実の人が虚偽の自白をしてしまうケースも少なくありません。
また、『マミー』の映画では、鑑定結果の信頼性に疑問が残るにもかかわらず、判決が下されることの問題が指摘されています。
10月23日には、1986年に発生した福井女子中学生殺人事件でも再審開始が確定しました。これらの出来事は、冤罪が過去の問題ではなく、今も私たちが直面する現実的な課題であることを示しています。
私たち一般市民としても、冤罪に対する理解と公正な見識を持ち、メディアや世論に流されることなく、「歪んだ正義感」や「決めつけ」にとらわれないよう心掛けることが大切です。
ACジャパンの広告では、最後に真犯人が自首してきて、容疑者が刑事に謝罪を要求するシーンで締めくくられます。
袴田事件やACジャパンの広告は、ネット上の情報を鵜呑みにしがちな私たちに対し、健全な警告を発してくれています。