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2020.06.29
人材育成はマーケティングである
デジタルエンジニアリンググループマネージャーの宮﨑です。
最近、社内のミーティングで人材育成についての議題が挙がりました。
新しく導入した社員成長支援制度にもとづき、どうやれば社員に成長の機会を提供し、成長意欲を醸成することができるかということでした。
部下の教育・指導の場では、「あいつは頑固だから上司、先輩の言うことを聞かない」や「あいつは三日坊主だから継続できない」など、指導者側の不満・愚痴をよく耳にします。
私もちょっと前まではそのような考えを持っていましたし、指導する側も成長してほしいと思って期待をするからこその不満だと思います。
また、成長が早い人は素直な人だということも言われています。
確かに周りのアドバイスを素直に聞き入れ改善できる人は、そうでない人に比べて成長は早いです。
うまくいっている人の真似をすることが、成長の一番の近道ですからね。
しかし、指導する側として忘れてはならないことがあると、私は思います。それは、
人は、自分が興味のないことは聞き入れない
ということです。
いくら周りが熱心に指導しても、そもそも本人に成長意欲がなければ聞き入れません。
頭では「成長しなければ」と理解していても、気持ちがついていかないのです。
だから、周りから見れば「あいつは頑固だ」「あいつは素直じゃない」ということになってしまう。とはいえ、大体の場合は社内の力関係が働き、無理やり研修に行かせたり(でも何の成果も出ない)、新しいことをやらせたりと、お互いストレスがたまる悪循環になってしまいます。
そんなこんなで私もいろいろ答えの出ない悩みを持っていたのですが、よくよく考えると人材育成の大前提は、社員に成長意欲を持ってもらうことです。これってマーケティングと一緒やん(福岡の人間なので、方言が出てしまいました)ってことに今さらながら気づいちゃったわけです。
マーケティングとは企業活動そのもの
BtoC (Business to Consumer)であれ、BtoB (Business to Business)であれ、製品やサービスをお客様に提供するには、マーケティングが欠かせません。
時代やテクノロジーの進化によってマーケティングに対する解釈は変化しているのかもしれませんが、一貫して変わらないのは、「お客様に製品やサービスの価値を提供し、対価をいただく」という一連の活動であり、言い方を変えれば「事業そのものがマーケティングである」となります。
「現代マネジメントの父」と言われている、ピーター・F・ドラッガーの著書にも、こう書かれていました。
マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品やサービスを合わせ、自ずから売れるようにすることである
- ピーター・F・ドラッガー『マネジメント』(上田惇生訳、ダイヤモンド社)
マーケティング専門の部門を持っている企業はそれほど多くないと思います。しかし、顧客を理解し製品やサービスを合わせるのはマーケティング部門だけがやっていることではありません。
開発部門や生産部門も、事業に関わる全部門がそれぞれの職場でマーケティング活動を行う必要があります。
マーケティングの「4C」
マーケティングのフレームワークのひとつに「4C」というものがあります。
これは製品開発から販売までのプロセスを顧客視点で4つのCに分解したものです。
Customer Value(顧客にとっての価値)
「自社の製品・サービスが顧客にとってどんな価値をもたらすか」という視点で製品・サービスを考えます。
製品・サービスそのものではなく、製品・サービスによって、楽しくなるか、癒やされるかなど、どんな価値があるかを明確にします。
Cost to the Cutomer(顧客の負担)
「顧客がその価値を手に入れるのにどれだけのコストを負担するか」という視点で製品・サービスを考えます。
コストには金銭、時間、健康(体力)なども含みます。
Convenience(顧客にとっての利便性)
「いかに顧客の求める価値にふさわしい利便性・入手のしやすさを構築するか」という視点で製品・サービスを考えます。
もちろん、コンシューマー製品は入手がしやすい方が良いですが、高級品は入手が為難いほうが価値が高まります。
Communication(顧客とのコミュニケーション)
「企業側のメッセージが正確に顧客に届いているか、また顧客の声は企業に届いているか」という視点で双方向のコミュニケーションが円滑に行われる仕組みを構築します。
消費者の価値観が多様化した現在は、4Cの考え方で企業活動を行うことが必須です。
マーケティングを人材育成に活かすべき
現在は採用の現場でもマーケティングが欠かすことができなくなっています。
ちなみに、弊社Webマーケティング担当、野口の『インサイドセールスに必要不可欠なマーケティングオートメーション ~withコロナ時代:リモートワーク~』にて、顧客の商品検討から購入行動が「AISCEAS(アイシーズ)」に変化したと書いていますが、これは商品の購入行動だけではなく、就職活動においても同じような変化が起きていることを考えると非常に重要な記事となっていますので、ぜひとも何度も読み返した上で、参考にしていただければと思っています。
さて、人材育成を考えた場合、自社の社員もいち消費者であると捉えることができます。
経営者は自社の事業の継続のために必要な教育を社員に実施したいと考えますが、インターネットにより様々な情報を入手できるのは消費者や求職者だけでなく、社員も同様です。
今や経営者にとって、自社の社員に対しても適切なマーケティングが必要不可欠になっています。
先程の「4C」を人材育成に当てはめてみましょう。
人材育成を「人材育成という施策を社員に提供する」と考えた場合以下のようになります。
Customer Value(社員にとっての価値)
「自社の育成施策が社員にとってどんな価値をもたらすか」という視点を持つと、業務に必要なスキルを身につけること自体は社員にとって何の価値もありません。
そのスキルを身につけた先に、社員に「仕事が楽しい」や「評価されてやる気が出る」などの価値を感じてもらう必要があります。
Cost to the Cutomer(社員の負担)
「社員がその価値を手に入れるのにどれだけのコストを負担するか」という視点で、社員が負うべきコスト(時間や労力)が得られる価値に見合ったものかどうかを考える必要があります。
Convenience(社員にとっての利便性)
「いかに社員の求める価値にふさわしい利便性・入手のしやすさを構築するか」という視点で社内教育や外部研修の受けやすさ、教材の入手のしやすさなどを考える必要があります。
今ではオンラインセミナーなどもありますが、その場合は実習があるかないかで得られる価値も変わるため、単に利便性だけで考えるべきではないかもしれません。
Communication(社員とのコミュニケーション)
「企業側のメッセージが正確に社員に届いているか、また社員の声は企業に届いているか」という視点で双方向のコミュニケーションが円滑に行われる仕組みを構築します。
育成施策に関する社内への情報発信が十分か、またフィードバックを得られ施策に改善を施す機能があるかなどを考える必要があります。
結局は社員が自ら成長したいと思えるかどうか
以上、人材育成とマーケティングについて長々と書きましたが、結局は、社員が自ら学びたい、成長したいと思えるかどうかが重要です。
学ぶ状態にない社員にどれだけ熱心に指導をしたとこで、「わかりました。(ち、うるせーな)」になってしまいます。
そして何もしない。挙句の果てに冒頭に書いたとおり周りの評価が「あいつは頑固だ」「あいつは素直じゃない」になってしまうのです。
私は、「人は頑固であり、素直でもある」と考えています。
興味のある分野はもっと楽しみたい、もっと上手くなりたいと思う反面、興味のない分野は耳も傾けない。
みんなそうでしょ?