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2026.07.27

AIエージェント元年、その現状と課題

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エンジニアリング部の宮﨑です。

SNSでは、「AIエージェント」という言葉をよく目にします。実際にこの半年ほどで、主要なAIサービスは次々とエージェント機能をリリースしています。一方で、「期待はしていたものの、思ったほど業務では使えていない」という声も同じくらい耳にします。

今回は、各社のエージェント機能を整理したうえで、なぜ現場で使いこなせないのか、そしてどう進めればよいのかを考えます。

各社が続々とリリースするエージェント機能

Claude(Anthropic)

Anthropicは2026年1月、AIエージェント機能「Claude Coworker」を発表しました。チャットで質問に答えるだけでなく、パソコン上のファイル整理やレポート作成、ブラウザでの情報収集といった作業そのものを任せられる機能です。2026年7月にはWeb版とスマホアプリのβ版も公開され、会社のパソコンで始めた作業の進み具合を外出先から確認できるようになりました。

ChatGPT(OpenAI)

OpenAIは2026年7月、「ChatGPT Work」を発表しました。指示を渡すとバックグラウンドで数分から数時間作業を続け、表計算やスライド、レポートといった完成ファイルを納品してくれるモードです。SlackやGmail、Google Drive、Salesforceなど既存の業務ツールとも接続でき、決まった時刻に定型業務を実行させることもできます。

Gemini(Google)

Googleは、ブラウザを自動操作する実験プロジェクト「Project Mariner」で培った技術を、2026年にGeminiアプリの「エージェントモード」とChromeの「Auto Browse」機能に統合しました。条件に合う商品や物件の調査から、フォーム入力や予約の操作までを、自然な言葉の指示だけで実行できます。

Genspark

Gensparkの「スーパーエージェント」は、複数のAIモデルと80以上のツールを内部で使い分け、計画から実行、結果の検証までを自律的にこなすサービスです。2026年4月には「AI Workspace 4.0」を含む大型アップデートが行われ、ビジネス利用に向けた機能強化が続いています。

AIエージェントとは何か

各社の機能に共通する方向性は、「質問に答えるAI」から「業務を代行するAI」への進化です。

従来のチャット型AIは、人が質問するたびに一往復で答えを返す、いわば相談相手でした。これに対して**AIエージェント**は、目的を与えると、自分で手順を組み立て、必要なツールを操作し、成果物を仕上げるところまでを担うAIです。人間の側は、プロンプトを打ち続ける代わりに、目的と条件を渡して途中経過を任せることになります。

うまくはまれば、情報収集や資料作成、定型的な事務処理にかかる時間を大きく減らせます。各社が一斉にこの領域へ投資しているのは、チャットの次の主戦場がここだと見ているからです。

しかし、現場では使いこなせていない

ところが実際に導入した企業からは、「デモでは動いたのに、自社の業務に当てはめると精度が出ない」「結局チェックの手間が増えて、元のやり方に戻した」という声をよく聞きます。ツールの性能は急速に上がっているのに、なぜ現場では成果につながらないのでしょうか。

私たちがご相談を受ける中で見えてきた理由は、大きく5つあります。

理由1:AIが使える形でデータが整っていない

エージェントは、接続先のデータを読んで動きます。ところが多くの会社では、業務データが紙やスキャンしただけのPDF、個人のローカルフォルダ、命名規則のないファイルサーバーに散らばっています。人間なら「あのフォルダのあれ」で通じますが、AIはアクセスできないデータを使えません。

理由2:業務フローが定義されていない

「見積もり作成をAIに任せたい」と言っても、その見積もり作成が実際にどんな手順で行われているかは、担当者の頭の中にしかないことがほとんどです。業務が作業単位に分解されていなければ、AIに渡す指示そのものが書けません。

理由3:作業ごとの品質基準が明文化されていない

業務を分解できても、次の壁があります。一つ一つの作業について「何をもって完了とするか」が暗黙知のままなのです。ベテラン社員は経験でこの基準を補っていますが、AIは補えません。

理由4:成果物の品質が定義されていない

最終的なアウトプットについても同じです。「良い報告書」「問題ない返信メール」の基準が言葉になっていないと、AIの出力の合否を判定できません。判定できないものは、怖くて任せられません。

理由5:AIへの過大な期待

そして根底にあるのが、「導入すれば勝手にやってくれるはず」という期待です。ここまで見てきたとおり、エージェントは、データと業務の定義と品質基準を人間の側が用意して初めて機能します。この準備を飛ばして導入だけ進めると、多くの場合、期待外れに終わります。

よくある失敗パターン

※以下は特定の企業の事例ではなく、よくあるパターンを一般化したものです。

典型例が、問い合わせメール対応の自動化です。エージェントに過去のメールを読ませて返信案を作らせたところ、一見それらしい文面は出てくる。しかし「どの問い合わせなら即答してよいか」「値引きや納期についてどこまで書いてよいか」という基準を事前に決めていなかったため、結局すべての返信案を人間が確認して修正することになり、導入前より工数が増えてしまう。こうした展開は珍しくありません。

これは理由2〜4がそのまま表面化したケースです。AIの性能の問題ではなく業務の定義の問題なので、ツールを乗り換えても解決しません。

今後の進め方

では、どう進めればよいか。私たちがおすすめしているのは、次の順番です。

  1. 業務の棚卸し:時間がかかっている業務を書き出し、繰り返しが多く判断の少ないものを1つ選ぶ
  2. 業務の分解:選んだ業務を、担当者へのヒアリングで作業単位の手順に分解する
  3. 品質基準の明文化:各作業と最終成果物について「何をもって合格とするか」を文章にする
  4. データの整備:その業務でAIが参照するデータを、アクセスできる場所と形式に整える
  5. 作業専用の指示書づくり:分解した手順と品質基準をもとに、その作業専用のAIへの指示文(プロンプト)を作る。毎回ゼロから指示するのではなく、「この作業を頼むときはこれを渡す」という指示書として保存し、誰が使っても同じ品質になる形にしておく
  6. 小さく試して、育てて広げる:選んだ業務でエージェントを動かし、最初のうちは結果を必ず人が確認する。品質基準に届かなかったところは指示書に反映して育てていき、安心して任せられるようになってから確認の回数を減らし、次の業務へ広げる

順番が肝心です。ツール選定から入るのではなく、1〜5の準備が先です。逆に言えば、この準備は業務マニュアルの整備そのものであり、仮にAI導入を急がなくても会社の資産として残ります。

まとめ

2026年、AIエージェントは「試せる技術」から「業務に組み込める技術」へと着実に進んでいます。ただし、使いこなせるかどうかを分けるのは、AIの性能ではなく、自社の業務をどれだけ言語化できているかです。

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